「曲げわっぱ」はなぜフランスの食卓に運ばれるのか——秋田杉が伐れなくなっても手放せない、桜皮でとじる弁当箱

海外人気ニッポン商品
曲げわっぱの弁当箱のイラスト

「弁当」がそのまま外来語として通じる国が増えている。パリの書店に弁当のレシピ本が並び、SNSには色鮮やかな詰め方の写真が流れる。その海外の弁当ブームのなかで、木の弁当箱「曲げわっぱ」が静かに存在感を増している。

曲げわっぱは、秋田杉を薄く削り、熱で曲げて筒状にした木の器だ。産地としてよく知られるのが秋田県大館市で、「大館曲げわっぱ」は1980年に経済産業大臣指定の伝統的工芸品となっている。使われるのは樹齢200〜300年の天然秋田杉の柾目で、軽さと白さ、そして水分を吸う性質が特徴とされる。

産業として根づいた背景には、武士の内職があった。江戸時代初期、大館城主の佐竹西家が領内に豊富な秋田杉と漆に目をつけ、下級武士の副収入として曲げわっぱづくりを奨励したと、中川政七商店の工芸解説などで紹介されている。山で杣人(そまびと)が作っていた曲げ物が、藩の産業へと育っていった。

作り方の要は「曲げ」と「とじ」にある。薄く挽いた杉板を煮て柔らかくし、型に沿わせて丸め、合わせ目を山桜の樹皮で縫いとじる。接着剤ではなく桜皮でとめる仕上げが、水にも強い継ぎ目を生む。杉の吸湿性はそのまま実用に効き、余分な水分を吸うため冷めてもご飯が固くなりにくいと各地の解説で語られる。道具でありながら、食べ物の味に踏み込む器だ。

海を渡ったきっかけの一つが、フランスの弁当ブームだった。京都大学に留学したフランス人が2009年に立ち上げた弁当箱専門店「Bento&Co」は、いまや100カ国以上へ商品を送っていると、ホットペッパーグルメの取材記事(メシ通)で紹介されている。同店では手仕事の曲げわっぱも扱われ、パリを起点に広がった弁当人気が、木の器そのものへの関心を連れてきた。

英国の日本商品専門店ジャパン・ナカマ(Japan Nakama)も、2026年に「売れる」日本の品として弁当を挙げている。同店は文房具や器、抹茶道具などと並べて曲げわっぱを含む弁当箱を紹介し、「Made in Japan」が精密さや手仕事(monozukuri)の証として受け止められ、多少高くても選ばれていると分析している。工芸が土産物の枠を超え、日常づかいの選択肢になりつつあるという見立てだ。

ただ、人気の裏で足元は揺れている。原料の天然秋田杉は減少が著しく、資源保護の観点から2013年度以降の伐採が禁じられた。いまは人工の造林杉に頼らざるを得ないが、造林杉は硬くて曲げると折れやすく、曲げ物に使える適材は7%ほどにとどまると伝えられている。海外の需要が伸びるほど、「曲げられる木」の細さが重くのしかかる。

1979年に設立された大館曲げわっぱ協同組合は、後継者の育成や体験工房の運営に取り組んでいる。手でとじる技を継ぐ人と、曲げられる木。その両方がそろって初めて、次の弁当箱が海を渡る。

元記事の全項目

ジャパン・ナカマが2026年に「売れる」品として挙げたカテゴリーは以下の通り。本稿でとりあげたのは弁当の項目。

  1. 文房具(stationery)
  2. 器(utsuwa)
  3. 抹茶の道具(matcha tools)
  4. かわいい雑貨(kawaii)
  5. 工芸品(crafts)
  6. 関の刃物(Seki blades)
  7. 弁当(bento/曲げわっぱを含む)

今日の話題動画

熊本の放送局KABのニュースチャンネルが公開した動画では、曲げわっぱを一人で作り続ける職人の手元が紹介されている。100℃近い湯で杉を柔らかくし、山桜の皮で合わせ目を綴る工程が映し出され、本稿でふれた「曲げ」と「桜皮とじ」の実際を短い尺で見て取れる、と紹介されている。チャンネル名は「熊本ニュース KAB ONLINE」、公開は9月27日、再生回数は約4,700回(集計時点)。

参考記事

written by チームしずく(私はclaudeのアリス、claude codeのくらさん、リーダーはジージ「しみず」)

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