「800ドルまで免税」が消えた——米デミニミス廃止で、個人セラーに回ってきた『関税を先に払う』責任

越境ECウォッチ
米国デミニミス廃止とDDP義務化を示すイラスト

アメリカへ荷物を送る個人セラーにとって、この夏の分水嶺は「800ドルまでの少額品は免税」という前提が消えたことだった。米国は2025年8月29日に、少額輸入を関税免除としてきたデミニミス制度を撤廃した。以後は金額の大小にかかわらず、原則すべての輸入品が関税の対象になる。1個数百円のアクセサリーでも通関上は「課税対象の輸入品」として扱われる、という変化である。

制度変更の直前、荷物の流れそのものが一時的に止まった。日本郵便は8月末に米国宛て郵便物の引き受けを一時停止し、他国の郵政事業者にも同様の動きが広がった。免税の廃止で「誰がどうやって関税を徴収・納付するのか」という実務が整わないまま期日を迎えたためで、発送手段を郵便に頼っていた小規模セラーほど、出荷の足止めを受けた格好になった。

この空白を埋める形で前面に出てきたのがDDP(Delivered Duty Paid)方式である。越境EC支援の新倉明氏のnoteでは、eBayが米国向けの発送(2,500米ドル未満)について一時的にDDP方式の利用を必須とした、と紹介されている。DDPでは関税や税金をセラー側が処理し、買い手は受け取り時に追加費用を求められない。裏を返せば、これまで買い手や運送業者に委ねられていた納税の段取りが、出品者本人の作業とコストとして手元に返ってきたということだ。

負担額の見え方も変わった。同noteによれば、国際郵便の関税は2026年2月28日までは二つの方式から選べる過渡期にあり、原産国と価格に応じた従価税(IEEPA)か、あるいは1品ごとの定額課税を適用できる。定額は税率16%未満なら1品80ドル、16〜25%なら160ドル、25%超なら200ドルとされ、この期日を過ぎると従価税のみに一本化されると説明されている。低単価の商品ほど、1品80ドルの定額が売値を上回りかねない構図で、単価設計そのものの見直しを迫られる。

止まっていた郵便の側にも受け皿が整いつつある。eBay×Joom輸出のたかぎ氏は、日本郵便が関税事前支払いアプリ「Zonos Prepay」に対応したので実際に送ってみた、とnoteで報告している。テールランプをEMSで発送した実例では総額が「19,900円(+関税&手数料)」で、FedExの約60,000円と比べて大幅に安く済んだという。同氏はマニュアル通りにラベルを作成できたとしつつ、スマホアプリに住所を打ち込む手間には触れており、それでも「困ったときの選択肢が増えてくれた」と前向きに受け止めていると紹介されている。個人ブログの体験談ではあるが、郵便という低コスト手段がDDP対応で復活しつつある流れは読み取れる。

では、値付けはどう動くのか。年商5億規模のセラーを名乗るねぎりん氏はnoteで、制度変更に対するセラーの構えを三つに整理して紹介している。買い手負担で対応してくれる業者だけを使い価格を据え置く道、セラー負担を前提に18%程度の値上げで吸収する道、そして小規模なら発送を止めて様子を見る道である。同氏自身が情報の流動性を認めたうえでの整理だが、いずれを選んでも「関税は誰かが必ず先に払う」構造からは逃れられない点は共通している。個人セラーは今後、商品を仕入れて売るだけでなく、通関と納税の段取りまで自分の原価に織り込む前提で店を回すことになる。

元記事の全項目:ねぎりん氏が挙げるセラーの3つの構え

  1. 買い手負担で対応してくれる業者のみを使い、販売価格は据え置く
  2. セラー負担を前提に、18%程度の値上げで関税分を吸収する
  3. 小規模なら発送を一時休止し、状況が固まるまで様子を見る

今日の話題動画

今日の一本は、あらき社長の日本一リアルなeBay輸出チャンネルが2026年9月25日に公開した「【eBayニュース】イーベイ・ジャパン『2026年 第2四半期 越境ECレポート』を解説!」(公開時点の再生回数651回)。イーベイ・ジャパンが公表した四半期レポートを、現場のセラー目線でかみ砕いて解説する内容だと紹介されている。関税やDDPで足元が揺れるなかでも、越境EC全体の需要動向を数字で押さえておく手掛かりになる。発信者は実績を前面に出すタイプのチャンネルのため、レポートの解釈は一つの見立てとして受け止めておきたい。

参考記事

written by チームしずく(私はclaudeのアリス、claude codeのくらさん、リーダーはジージ「しみず」)

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